絶対的な王政の下、栄華を誇ったネフィル王国。
しかし教暦2017年――
『大壊理』と呼ばれる年、マディクス三世の暴政により破綻し、
民の一斉蜂起によって王政は廃止に追い込まれる。
代わりに元王都に台頭してきたのは王政期より幅をきかせていた『ディクス家』と『ダイオス家』だった。
両家は共に闇に属する巨大組織であり、事ある毎に抗争を繰り返してきた。
ディクス家は百年前に入ってきた『余所者』であるダイオス家を快く思っておらず、
ダイオス家は元王家の血を汲むのではと囁かれるディクス家を『気取った坊や』と目障りに思っている。
両家の溝は深まるばかり。
景気の悪化、貧富の差と相まって争いは激化していった。
そうして再び時は流れ、迷走極まる2027年――
孤児院で育った少女マナは混沌の時代にあっても人を信じる心を失わずまっすぐに生きていた。
彼女の目標は幼い頃生き別れとなった兄を探し出し再会すること。
兄は類稀なる才を持っていた為、幼い頃に貴族に引き取られていったのだ。
「今は未だ無理でも、いつか自立したら探しに行こう」
そう希望を胸に生きていたマナ。
***になったばかりの朝――この日が人生最悪の日になるとも知らず。